スキーとネットとロードバイクと旅。

群馬で自由人からリーマンになった恋する男の趣味に生きるブログ。

冲方丁「天地明察」読了

歴史の綴り方もさまざま。読みやすさ重視もあり。

歴史小説はさまざまあれど、読みやすさを主眼に置けば右に出るものはないのではないでしょうか。

 

天地明察(上) (角川文庫)

天地明察(上) (角川文庫)

 

 

天地明察(下) (角川文庫)

天地明察(下) (角川文庫)

 

 

読みやすさというのは文言自体が平易なものかどうかというのもありますが、読み手を乗せる展開やリズムというのもその要素に入ってくると思います。この「天地明察」はなじみにくい暦を、しかも徳川時代の暦を、予備知識無くともスムーズにストーリに溶け込ませている。そもそも主題なのであたりまえと言えば当たり前ですが、肝心の暦を算出する理論の詳細をあえて書かないことで読み手にそのストレスを与えないようにしている配慮がうかがえます。

あえて書かない、というのは結構難しいことで、書き手としては正確を期することを考えればどんどん詳細に書きたくなってしまうもの。それをどこまで書いてどこまで書かないかを選別するラインというのはセンスが問われるところですが、もともとライトノベルを書いていたという著者はおそらく調べ上げた膨大な知識量から読み手を意識して書くべき知識を選別してストーリーを組んでいるのが良くわかります。