青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか」読了
サイモン・シンというサイエンスライターがいます。有名な著作としては数学界の難問に挑んだ数学者を描き出した「フェルマーの最終定理」や軍用から始まり今ではインターネットや様々な分野で活用されている暗号化の歴史を紐解いた「暗号解読」というものがあります。
どちらも数学にまつわる話ではあるけれども、数学に通じていない僕のような人間でもわかりやすくその醍醐味を味わうことができるような内容にできるように書き手が心を砕いているのがわかる本です。とても面白いのでぜひ読んでみてもらいたいです。
そのサイモン・シンは、宇宙の始まりを探求する科学者の生き様を描いた「ビックバン・宇宙論」(新潮文庫では「宇宙創成」というタイトルに変更)という著作も発表しています。
そのタイトルの通り、宇宙に対する認識の歴史と最新の宇宙理論をつまびらかにした内容で、理論そのものを理解するというよりもそのエッセンスと宇宙に対する理解の歴史のダイナミズムを描き出すことに重点を置いているため、こちらも僕のような宇宙論に疎い人間にとってもとても入り込める良作でした。
この3つの作品とても有名なのでご存知の人も多いと思いますが、その3作品の訳者が青木薫という人です。京都大学の理学博士である青木氏ですが、数多くの科学論文や評論の翻訳を手掛けています。
基本的には翻訳家としての立場を続けてきた青木氏ですが、元来「宇宙は人間のために創生された」といういわゆる「人間原理」ともいうべき前コペルニクス的な考えが近現代の科学からは排除すべきものとして取り扱われてきたという歴史を踏まえつつ、最新の宇宙理論に拠ってくるとその「人間原理」を見つめなおす必要性から、自ら筆を取ったのが「宇宙はなぜこのような宇宙なのかー人間原理と宇宙論」です。
宇宙はなぜこのような宇宙なのか――人間原理と宇宙論 (講談社現代新書)
- 作者: 青木薫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/07/18
- メディア: 新書
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宇宙とはどのようなものなのか、宇宙の外はどうなっているのか?とても興味深く思いをはせるテーマに、一読の価値ありです。